「LibreOffice Kaigi 2023 オンライン」を開催しました

2023年7月15日(土)に、LibreOfficeの日本での年次会議「LibreOffice Kaigi 2023 オンライン」を開催しました。遅くなりましたが開催報告をします。2021年からはオンラインで開催しています。今年も発表者とスタッフはJitsi Meetで、参加者はJitsi MeetかYoutube Liveでの参加というスタイルで実施しました。最大同時接続数は両方を合わせて約19名でした。The Document Foundationとアイクラフト株式会社にスポンサーしていただきました。ありがとうございました。

13時から17時半まで午後を通じて、基調講演、6本の応募トーク、日本語チームからの報告と全部で8本の様々なトークがありました。

発表の様子は録画でみることができます。スライドもTDF Wikiにアップロードしています。

Jitsi meetでの集合写真

以下、各トークの内容について紹介します。

基調講演では、韓国のLibreOfficeコミュニティを引っ張っているDaeHyun Sungから、韓国やCJK(日中韓)分野でのFLOSS(Free/Libre and Open Source Software)貢献活動について紹介がありました。子供の頃から見かけたCJKの文字の話からスタートし、CJKの漢字の扱いの違いについてのお話がありました。

Unicodeでは、似た字形のCJKの漢字を1つのコードポイントにする「CJK統合漢字」が多くあり、異なる言語のフォントにすると字形が異なることがよくあります。逆に字形が異なるということで別のコードが割り当てられているケースもあります。また、同じ漢字でも「嵐」など意味が違うケースもあり、それらを比較紹介がありました。

後半は、どのようにオープンソースコミュニティに参加してきて、どのような活動をしてきたのか紹介でした。Linuxユーザーとしてユーザーグループに参加したり、KLDPという韓国語でのLinuxのWebサイトを読んだり投稿していたそうです。Gnome Asia 2013やKDEのイベントでCJKのトークを聞いたりしたあと、Gnome gucharmapや、GNOME characters、KDE kcharselect、libhangul(KDE IME)などでもコードコミットしたそうです。

COSCUP 2017ではLibreOfficeコミュニティのフランクリンやイタローや小笠原さんと会った話もありました。LibreOfficeでの最初のコードでの貢献は、ハングルと韓国語の漢字(ハンチャ)を変換する辞書をアップデートするものでした(https://gerrit.libreoffice.org/c/core/+/54562)。2019年からはThe Document Foundationのメンバーでもあります。その後もCJK関連のバグ修正したいくつかの紹介がありました。新型コロナになって過労もあってコミュニティ活動はほとんどできてなかったそうですが、再びLibreOfficeでの活動を増やしています。直近では、Writerで韓国語デフォルトフォントサイズを10.5ptから10ptへ変更したことでした。

今回はDaeHyunの活動が活発になってきたことや、CJKの連携を強化してバグなどに対処していきたい思いもあって、DaeHyunに基調講演をお願いしました。どのように活動を広げてきたのかや、CJKでも共通のバグや、韓国特有の事情によるissueも紹介されていて興味深かったです。

DaeHyunの基調講演の様子。韓国のRubyの例

2つ目のセッションは、Kenta Itoさんによる「LibreOfficeを社内に導入した結果について」というタイトルで、企業内で導入されるなかでの工夫やうまくいったこと、課題についてのお話でした。企業で全社導入されているところは時々あるようですが、日本で事例として発表されることは少ないので貴重だと思います。330名前後の会社で手広く事業をされている会社です。情報システム課2名でだそうです。現場中心の会社で、人に聞く人が多い文化です。上層部からは、クリエイティブな仕事をしてほしく、業務効率向上とコスト削減を実現して欲しいという要求があったとのことです。

慣れたオフィスソフトを入れ替えるのはストレスになることもあって難しさがあるので、会社のインフラ全体を考慮した計画を立てられたそうです。中長期計画で、プラットフォームの整備、周知活動、ITリテラシー向上の3つを計画しました。プラットフォームではODFを流通するようにしてベンダーロックインの回避をはかりました。Nextcloudを導入してクラウド上で情報を一元管理、グループウェアの置き換えでコスト削減、Collabora Onlineを使って普段のファイルをODFにしていく作戦です。周知活動としては管理職のミーティングでディスカッション、アピールをしつこくしましたそうです。ITリテラシー向上としてはトラブルの原因を説明して理解をすすめていきました。

現場では中古PCを使うケースも多くトラブルも多かったので、HDDをSSDに交換する際などで1台ずつUbuntuに置き換えていったとのことです。営業部門や管理部門はWindowsで、現場は徐々にUbuntuに移行、社員にAndroid端末を整備してNextcloudにアクセスしてもらう方針です。社内フォントをNoto Sans CJK JP/Noto Serif CJK JPに統一、テンプレートをODFで作って配布するなどもしました。

導入時のサポートは情報システム課2名では手がまわらなくい面はあったそうです。導入当初はサーバーのリソースの問題でNextcloudが毎日サーバダウンするなどのトラブルもありましたが、スケールアップやDBの調整で安定しました。Collabora OnlineなのでODFが社内で標準になってきたようです。また、副次的な効果として、Ubuntu/LibreOfficeでEmotetなどのリスク軽減にはなったとのことです。外部とのファイルのやり取りでLibreOfficeでは完結しきれなかったり、CVSファイルを開く場合のオプションダイアログなどLibreOfficeの機能を不具合と認識するケースも多かったそうです。事務スタッフは慣れることに苦労される傾向にあり、現場側はUbuntuに切り替えていっているせいもありこんなものだと思っているとした声が多かったそうです。

課題として、各管理者に新ツールへの適応は、緊急ではないが重要度の高いアクションだと認識してもらう必要がありました。。LibreOfficeへの抵抗感の強さは、日本でのブランド力が弱いことや、行政への提出書類が対応していなかったこともあります。今後、サポートを強化としてショート動画配信や、ワークショップ、Eラーニングを考えているとのことです。

Itoさんの発表の様子。

3つ目は、案浦浩二さんの「Pythonマクロの実用的な使い方」でした。LibreOfficeではPythonでマクロが書けるのですが、どうやって編集するのかちょっとわかりにくかったりするので、最初の一歩をどうすればいいかのお話がありました。

4つ目は、田中秀宗さんの「チャットGPTによるLibreOffice Basicマクロ自動生成」でした。ChatGPTが大流行りで、プログラミングにも便利に使っている人もいるようです。LibreOffice Basicのマクロを生成に挑戦して見るお話でした。

5つ目は、玉越正樹さんの「シン・LibreOffice補完計画」でした。OSC2023nagoyaで展示されていた、MIDI機器を使ってImpressを操作する仕組みをどうやって作ったのか、今後どのようにImpressが進化してほしいかといったお話がありました。

6つ目は、秘密結社オープンフォース 河野さんの「流通と再編集可能な描画フォーマットを LibreOffce Draw から考える」でした。Qiitaなどに書く文章に数式のPNG画像を使われていて、PNGはソースファイルを埋め込むことができ、LibreOffice Drawで編集できるようにされたお話でした。

最後に日本語チーム枠として榎から「この1年のLibreOfficeの状況を振り返る」として、振り返りのお話をしました。

2024年もオンラインで開催する予定です。また、今後も日本語コミュニティでは毎月木曜日20時から一緒にコミュニティの作業を行う「LibreOffice hackfest Online」や、ユーザ同士のノウハウを共有する「オンライン勉強会」(3-4ヶ月に1回)も開催していきます。申込サイトでメンバーになれば通知がきます。興味を持たれた方はご参加ください。

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