LibreOffice Asia Conference 2019 Tokyo基調講演ビデオに日本語字幕が付きました
これは、LibreOffice日本語チームおがさわらさんの個人ブログに書いた記事の転載です。素晴らしい作業と翻訳者による解説は、オフィシャルに紹介してもよい記事だと思うので改めてLibreOfice日本語チームブログに転載しました。皆さまも、おがさわらさんによるセルフライナーノーツと合わせてお楽しみください(nogajun)
去年行われましたLibreOffice Asia Conference 2019 Tokyoの基調講演2本の字幕を聞き取りなおして日本語訳もつけたので、 せっかくだからもっといろんな人に見てほしいということで宣伝エントリーを書くことにしました。
言わずもがなですがわたくしの個人ブログに書いてることからお分かりの通り、 ここに書いてあることはLibreOffice日本語チーム、あるいはTDFをいかなる意味でも代表した発言ではござりませぬ。 あくまでもLibreOfficeというプロジェクト、コミュニティに好感を持つ一個人の意見としてお読みくださいませ。
さておき。動画については字幕ONにして、言語を日本語にしてご覧くださいね。
Mark Hung: LibreOffice CJK Bugs, Fixes, and Stories.
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Mark Hung氏は台湾のLibreOffice開発者です。 主にLibreOffice Writerにて、を日本語で利用するには欠かせない、 アジア言語(いわゆるCJK; Chinese, Japanese, Korean)ならではの組版規則、ルビ、縦書き、BMP外のUnicode文字の扱いなど、さまざまな不具合を修正してきました。 最近ではWriterだけでなく、Impressのアニメーションの改善などにも取り組んでいます。
この講演では、なぜ彼がLibreOfficeに取り組むことになったか、 そしてどういう問題に取り組んできたかを、ストーリー仕立てで話してくれました。
Markのすごみというかは、自分の解ける範囲の問題を着実に解いて、それを意識して広げているってことです。
例えばルビの不具合、彼が直してくれたというときには、そうかー台湾でもルビ使うのかーって素朴に思ってたんですけど、 そうじゃなくて、自分が使ってないけれども領域が近い(CJKな問題)、 直せそうな問題を選んで取り組んだということをこの講演で言ってて、 なんというかそういう姿勢がすごいですよね。
LibreOfficeが持つCJKなさまざまな機能について振り返るという意味でも面白いですし、 それから、彼のLibreOfficeのストーリーのきっかけとなる、 Apache OpenOfficeで数週間放っておかれた不具合がLibOでは翌日レビューされて、 それが理由で組織がLibOを採用した……なんて話も面白いです。
あんまり弁が立つほうじゃないので、TED的なうまさはないですし地味に聞こえるかもしれないですが、 私としては、淡々とした口調であるからこそ、 なおかつ自分の活動を声高に主張しないからこその、 強さがあるなあと思いました。
彼の活動を日本に紹介したい、だから日本で講演してほしい。 それはずっと思ってきたことだったので、 とっつきの派手さがないから動画見られていない、 SNSとかでもあまり言及がない、ということなら、 それはすごいもったいないと思うのですよねー。
ので、とにかく見てほしいです。OSSへの貢献のありかたという意味でも興味深いです!
Italo Vignoli: LibreOffice, the many different faces of a global community
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Italo Vignoli氏は、LibreOfficeを法的・財務的に支える非営利組織であるThe Document Foundation(以下TDF)の創立メンバーで、 マーケティング・広報担当コンサルタントとしてTDFと契約しています*1。 TDFが行っているLibreOffice認定制度を行う認定委員会の共同委員長でもあります。
LibreOfficeプロジェクト、プロダクトの説明もしていますが、それよりも、 LibreOfficeを取り巻く世界と、そこにおいてLibreOffice/TDFは何を目指して何をしてきたかという話が、 とても興味深いです。
ソフトウェアライセンスの輸出入の多寡で見る世界地図というところは実に衝撃的で、 LibreOfficeを使ってなくても、日本においてソフトウェアにかかわっている人であれば、 この話を聞くだけのためにぜひ見てほしいです。
またLibreOfficeの前身プロジェクトであるOpenOffice.orgとSun、Oracleの関係、 OpenOffice.orgが商標を譲渡したApache OpenOfficeとIBMの関係なんかも、 改めて聞くと面白いんじゃないかと。
まあItaloという人はとにかく弁が立つ人で(そういう意味ではオープニング基調講演のMarkとは対照的)、 若干あおりが入ってるところもありますが、 笑いが絶えない、funかつinterestingな講演でした。
Lothar Becker: Certified as a LibreOffice professional – a win/win/win situation for the community
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※Italoの講演の続きとなります。
Lothar Becker氏は、Italoと同じくTDFのLibreOffice認定委員会の共同委員長です。 OpenOffice.orgの時代から、ドイツでもっとも古い移行案件を実施し、またOpenOffice.orgの認定制度を立ち上げるなどの活動をしてきたそうです。 なお、この当時は違いますが、今はTDFの議長を勤めています。
で、この講演は、彼の実績から、LibreOfficeのビジネスとエコシステムとコミュニティ、 そして認定制度についてのものでした。
ええと、正直に申し上げます。わたくし、 Lotharの話、LibreOfficeのグローバルなカンファレンス(LibreOffice Conference、通常LibOCon)で聞いて、 いまいちピンとこなかったんですよね。 じゃっかん抽象論っぽく聞こえて。
というのは、やっぱりあれじゃないですか、 LibreOfficeへの移行を(その動機はさておき)検討した場合、 「いやそんなことできませんよ」となる理由の一つは、 専門家によるサポートが受けられないことだと思うんですよね。 で、なぜサポートできる専門家がいないかというと、 平たく言うとそれでご飯が食べられないからです。市場がないか小さいから。 これってまさに鶏と卵のジレンマですよね。 そこに対するよい答えが、ないように思ってたのです。
でも、今回書き起こしのために時間かけて聞いたら、 自分で自分に「日本市場には適用できない」って言い訳しちゃってたのかもしれないです。
うーん今のところ考えまとまってないのでうまいこと言えないですけど、 まあ自分としてもうちょっとできることあるんじゃないかな、 人のせいにしてないで、そういうことやらないとなーと思える講演ではありました。
また、LibreOfficeの認定制度についてですが、 オフィスソフトの認定制度というとMSさんのMOSとかそういうのがぱっと浮かびますが、 そういうものとは少し違うんですよね。 その点、ちゃんと説明があったのもよかったと感じました。
……ということで三つの基調講演を紹介しました。
それぞれ、少しずつベクトルが違って面白い講演だったと思います。
面白いな、と思ってくださったら、ぜひ高評価、よろしければチャンネル登録もお願いします*2!
おまけ:字幕書き起こし・翻訳作業について
- 作業時間は動画2本3講演トータルで、んー、15時間ぐらいかなあ?
- 書き起こし:翻訳 = 8:2 ぐらい?
- YouTubeの字幕付けUIが微妙すぎるという問題が……
- 3時間分ぐらい作業したところで結果を吹っ飛ばしてしまい、やる気を失ったのが1年かかった理由です。ごめんなさいごめんなさい。
- というか私のヒアリング力ですね
- 結局VOCABが足りないってことなんですよねー
- どうしても聞き取れなかった部分はありましたごめんなさい
- Markの講演で時々出てくる中国語、Italoのイタリア語での自己紹介、固有名詞(人名など)がけっこう大変でしたが、割と拾えた方ではと自画自賛
- YouTube先生の自動認識、精度7割ぐらいかなあ
- ゼロから書き起こすよりかははるかに楽なのでそれはよい
- それよりも字幕の切れ目を合わせるのが大変
- Lotharの講演はだいぶ力尽きてしまい、変なところで切れたりしてます。気力があれば見直ししたい
- 翻訳というより作文です
- 字幕として意味が通るように割と大胆に作文しました
- 私を信用できない人は英語をご覧になるか、字幕オフって自分で聞いた方がいいですw
- 間違いなどあったら(できればこっそり)教えてください
すんごい大変だったので残りの講演についてはこういうことはもうやらないと思います……。
逆にやりたいのは、会津若松市の本島さんの講演に英語字幕付ける作業。グローバルなみんなに紹介したいんですよね。
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*1:人呼んでTDFのゴッドファーザー。
*2:YouTuberか!
このエントリーは、LibreOffice日本語チームおがさわらなるひこのブログ「おがさわらなるひこのオープンソースとかプログラミングとか印刷技術とか」の記事「LibreOffice Asia Conference 2019 Tokyo 基調講演の紹介」からの転載です。
この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 – 継承 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。