LibreOffice 7.3 Communityリリース — これまで以上の相互運用性

Microsoftの独自なファイル形式との相互運用性に焦点をあてたコードの改善が多くなされ、さらにOfficeから乗り換えるユーザを対象とした豊富な新機能が搭載されました。これらによって、LibreOfficeへの移行がより簡単になりました

2022年2月2日ベルリン – デスクトップ生産性向上のための自由なオープンソース・オフィスソフトのボランティアサポート版「LibreOffice 7.3 Community」がダウンロード可能になりました。
https://ja.libreoffice.org/download

デスクトップ、モバイル、クラウドでの個人の生産性を高めるLibreOffice Technologyプラットフォームをベースに作られ、Microsoft OfficeからLibreOfficeに移行したり、2つのオフィススイート間でドキュメントをやり取りするユーザーを対象に、多くの改善を提供します。

相互運用性の改善には、次の3つがあります。

  • 新機能の開発。例えば「変更の追跡」機能が表の中やテキスト移動の際にもより便利に機能するようになりました。これによりMicrosoft Officeドキュメントとの相互運用性も向上します
  • フォーマンスの向上。巨大なDOCXおよびXLSX / XLSMファイルを開く時の処理速度、一部の複雑なドキュメントのレンダリング速度、LibreOffice7.1で導入されたSkiaバックエンドを使用する際のレンダリング速度などが向上しました
  • インポート/エクスポートフィルターの改善。DOCでは大幅に改善された番号付けリストのインポート。DOCXでは大幅に改善された番号付けリストのインポート、図形に添付されたハイパーリンクがインポート/エクスポートできるように、編集許可処理の修正、段落スタイルの変更の追跡。XLSXでは行の高さの低減、保存毎にセルインデントが増える現象の解消、編集許可処理の修正、XLSXグラフのサポート向上。PPTXでは画像に対するオブジェクトの動作設定とハイパーリンクを修正、フッターのインポート/エクスポートの不具合修正、画像と図形のハイパーリンクを修正、テーブルの影の透明度を修正

加えてヘルプも、Microsoft Officeからの乗り換えを特に意識しつつ、すべてのユーザーにとって使いやすく改善されました。検索結果は利用中のモジュールに焦点を当てたものになりました(インデックス作成をFuzzysortからFlexSearchに変えました)。Calc関数のヘルプページについて正確性と完全性の観点から見直しを行い、Calc関数wikiページにリンクを張りました。また、ScriptForgeスクリプトライブラリのヘルプページが更新されました。

マクロ開発を容易にするScriptForgeライブラリも様々な機能で拡張されました。たとえば、Calcのグラフを定義するChartサービスの新規追加、マウスイベントで表示させるメニューを記述するPopupMenuサービスの新規追加、フォントやプリンターのリストを備えたプリンターの広範囲なオプション、オプション管理できるPDFエクスポート機能などです。すべてのサービスセットは、PythonとBasicで同じ構文と動作で利用できます。

LibreOfficeは、セキュリティや堅牢性の面で独自ファイル形式よりも優れたオープンドキュメント形式(ODF)のネイティブサポートを始め、DOCX、XLSX、PPTXファイルのより良いサポートなど、オフィスソフトの世界で最高レベルの互換性を提供します。また、LibreOfficeは多数の古いドキュメント形式を利用するためのフィルターも提供しており、ファイルの所有権とコントロールをユーザーに取り戻します。

Microsoft Officeが使用するファイル形式は、国際標準化機構(ISO)が2008年4月に非推奨にした独自のファイル形式に基づいており、ISO承認の規格ではありません。また大量かつ意図的に複雑化されています。このことは、本物のオープンスタンダードである「オープンドキュメント形式」(ODF)を採用しているLibreOfficeでは、取り扱いにおいて大きな障害となります。

LibreOffice 7.3は、ARMアーキテクチャーに基づきAppleが設計したプロセッサーのシリーズであるAppleシリコンで、ネイティブに利用可能です。ダウンロードページで利用できる選択肢に追加済みです。

LibreOffice 7.3 Communityの主な新機能をまとめた動画がこちらからご覧いただけます。

すべての新機能の説明はリリースノート[1]をご覧ください。

LibreOffice 7.3 Communityへの貢献者

LibreOffice 7.3 Communityの新機能は147人の貢献者によって開発されました。ソースコードへの貢献の69%は、TDFのアドバイザリーボードに参加するCollabora、Red Hat、allotropiaの3社及びThe Document Foundationを含むその他の組織に所属する49人の開発者によるものです。残り31%は98人の個人ボランティアによるものでした。

さらに、641人のボランティアが155の言語でローカライズに取り組みました。LibreOffice 7.3 Communityは、他のどのオープンソースソフトウェアや独占的ソフトウェアよりも多い120の言語でリリースされており、世界中で54億人以上の人々が母語(L1)で利用できます。また、23億人以上の人々がそれら120言語のうち1つを第2言語(L2)として使用しています。

企業向けLibreOffice

TDFは、企業・団体へのLibreOffice導入について、エコシステムパートナーが提供する特別な付加価値を多数含んだ、LibreOffice Enterpriseファミリー(デスクトップ、モバイル、クラウド向け)の導入を強く推奨します。これには、長期サポートリリース(LTS)、専門家による支援、個別のニーズにあわせた開発、サービスレベル契約(SLA)など多くの特典が含まれます。
https://ja.libreoffice.org/download/libreoffice-in-business/

このような推奨にもかかわらず、さまざまなエコシステム企業によってサポートされ、企業ニーズに合わせて最適化されたLibreOffice Enterpriseではなく、ボランティアサポート版のLibreOffice Communityを採用する企業が増えています。

この選択は、時間とともにプロジェクトの進化を遅らせ、LibreOfficeプロジェクトの持続可能性に問題を引き起こします。なぜなら、エコシステム企業が顧客のために開発したすべてのプログラムはマスターリポジトリでコミュニティと共有され、LibreOffice Technologyプラットフォームを改善している事実があるからです。

LibreOffice Technologyをベースにした製品は、Windows、macOS、Linux、Chrome OSの主要デスクトップOSをはじめ、AndroidやiOSのモバイルプラットフォーム、クラウドにも提供されています。プラットフォームの開発を遅らせることは、あらゆるレベルでユーザーに悪影響を与え、LibreOfficeプロジェクトがその期待や発展性を満たせなくなる恐れがあります。

LibreOfficeへの移行

The Document Foundationは、独占的なオフィスソフトからLibreOfficeに移行する企業・団体をサポートするために移行プロトコルを開発しました。このプロトコルは、LibreOffice EnterpriseファミリーのLTS版導入を前提としています。それに加え、認定専門家により提供される移行にまつわる企業の問題解決に沿った移行コンサルティングとトレーニングがあります。
参考: https://ja.libreoffice.org/get-help/professional-support/

実際、LibreOfficeには成熟したプログラムコード、豊富な機能、オープンスタンダードに対する強力なサポート、優れた相互運用性、そして認定パートナーによる長期サポート(LTS)オプションがあります。データのコントロールを取り戻してベンダーロックインから開放されたい企業にとってLibreOfficeは理想的なソリューションです。

LibreOffice 7.3 Communityの利用について

LibreOffice 7.3 Communityは以下のリンクから利用可能です。
https://ja.libreoffice.org/download/

商用OSの最小要件は、Microsoft Windows 7 SP1とApple macOS 10.12です。

LibreOffice TechnologyをベースとしたAndroidとiOS向けの製品についてはこちらをご覧ください。https://ja.libreoffice.org/download/libreoffice-for-android-and-ios/

アプリストアとChromeOS向け製品についてはこちらをご覧ください。
https://ja.libreoffice.org/download/libreoffice-from-microsoft-and-mac-app-stores/

個人の生産性向上を主な目的とし、新機能よりもテストとバグ修正が行われた安定したリリースが必要な方のために、The Document Foundationでは数カ月の間に後方移植された修正を含むLibreOffice 7.2ファミリーを保守しています。現在のバージョンはLibreOffice 7.2.5です。

The Document Foundationは、ユーザー向けの技術サポートは提供していませんがメーリングリストや質問掲示板のAsk LibreOfficeに質問を投稿して、ほかのユーザーからのサポートを受けられます。
https://ask.libreoffice.org/c/japanese/16

LibreOfficeユーザー、自由ソフトウエアを支持する方、コミュニティメンバーは寄付してThe Document Foundationを金銭面からサポートできます。
https://ja.libreoffice.org/donate

LibreOffice 7.3は、Document Liberation Projectによる文書変換ライブラリの上に構築されています。https://www.documentliberation.org

[1] リリースノート: https://wiki.documentfoundation.org/ReleaseNotes/7.3/ja

プレスキット

ダウンロードリンク: https://nextcloud.documentfoundation.org/s/MnZEgpr86TzwBJi

日本でのお問い合わせ先

LibreOfficeに関する日本語でのお問い合わせについては、LibreOffice日本語チーム <ja-contact@libreoffice.org> までお問い合わせください。(担当: 榎 真治/目黒 純)

このプレスリリースは、LibreOffice日本語チームといさなさん、うえきさん、西堀さんの協力により翻訳されました。

翻訳元記事: https://blog.documentfoundation.org/blog/2022/02/02/libreoffice-73-community/

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