2024年6月29日(土)に日本での年次会議「LibreOffice Kaigi 2024オンライン」を開催しました。遅くなりましたがイベントの様子を報告します。LibreOfficeの日本語コミュニティでは、毎年1回LibreOfficeのユーザーやコミュニティーメンバー、LibreOfficeに興味がある人が集まるLibreOffice Kaigiを開催しています。今年もJitsi meetとYoutube Liveを利用したオンライン開催で、参加者は合わせて22名でした。また、The Document Foundationとアイクラフト株式会社にスポンサーいただきました。ありがとうございました。 全部で6本の講演がありました。当日の動画や資料を公開していますので、見逃された方や復習される方はご覧ください。 動画(再生リスト) 資料(TDF wikiのページからリンク) 基調講演は、台湾のFranklin Wengでした。フランクリンは、LibreOfficeのグローバルコミュニティで活動し、台湾のLibreOfficeコミュニティやLibreOffice Asia Conferenceのリーダーであり、LibreOffice以外のFLOSS活動もされています。タイトルは「パブリック・マネー、パブリック・コード -それは何か、そしてなぜ私たちの政府がそれを採用する必要があるのか-」で、PMPC(パブリック・マネー、パブリック・コード)の紹介と、台湾での例について英語で紹介がありました。 「パブリック・マネー、パブリック・コード」は、公的機関が公金を使ってソフトウェアを開発する場合に、それをオープンソースソフトウェアにすることを義務付ける法律の制定を求める運動です。FSFE(Free Software Foundation Europe)のキャンペーンであり、オープンソースの世界ではわりと有名で、欧州の政府への働きかけは積極的にされているようです。 フランクリンの経験として、以前監視カメラなどの会社にいた時、製品にバックドアを実装するよう依頼されたこともあるそうです。民間製品ならともかく、政府の調達では大きな問題になるでしょう。また、ベンダーロックインが問題になることもあります。ブラックボックスではソフトウェアを正しく評価することもできません。COVID-19の状況下でソーシャルディスタンスのアプリが開発された話では、仕様上はプライバシーが守られることになっていましたが、本当にそのように実装されているかはオープンソースでなければ確認できません。 PMPCの利点としては、ライセンスコストの削減、重複開発の回避、ベンダーロックインの回避、透明性と説明責任が挙げられていました。そしてオープン・スタンダードの重要性と、ODFがPMPCに適合するということでした。 2つ目の発表は、案浦浩二さんの「WeblateのLibreOffice日本語翻訳を解析する」でした。LibreOfficeのUIやHelp翻訳は、オープンソースのWeblateをセルフホストして使っています。そのデータをダウンロードし、LLMで形態素解析などの前処理をして、Graphデータベースにデータを入れていました。英語が同じ言葉なのに、日本語訳が違う物を抽出して翻訳揺れの可能性をみつけるケースを紹介されていました。翻訳成果を分析して改善していくのに便利そうでした。 3つ目の発表は、田中秀宗さんの「実務でLibreCalcのマクロを使ってみた」でした。当日参加ができないので事前収録ビデオでの発表でした。建設会社で価格などの情報を表形式で持っていて、製品を選んで価格を自動入力するなど、マクロを駆使して便利に作られていました。シートを元にして、どのように実現したか解説がありました。スプレッドシートでどこまで頑張るかは状況によりそうですが、便利な工夫は参考になります。 4つ目の発表は、目黒純さんの「IPKmj明朝に絡む相互運用性問題と解析」でした。Microsoft OfficeのファイルをLibreOfficeで開く際に、漢字が変わってしまう問題があります。XMLのタグを調べているうちに、Microsoft Officeでは異体字の部分を切り離して、別の場所でタグ付されていることがわかってきたというお話でした。 5つ目の発表は、Kenta Itoさんの「日本におけるODF普及に必要なことは?」でした。社内でLibreOfficeやCollabora Online、Nextcloudを導入されていますが、その中での感じた課題や対策について、組織でどのように普及させるかの作戦についてでした。 6つ目最後の発表は榎の「この1年のLibreOfficeの状況を振り返る」でした。この1年間のLibreOfficeの開発やコミュニティに関することを数字やトピックで振り返りました。 内容が濃い発表がそろっている印象で、参考になるお話でした。最後に全体で質疑やディスカッションを行いました。様々な質問もでて時間が足りないくらいでした。また、懇親会の変わりではないですが、Jitsiでのみ雑談会も行いました。 日本でのLibreOfficeのイベントは、オンラインでは、毎週月曜20時からLibreOfficeの公式質問サイトの回答や翻訳などの活動をするHackfsetや、3-4ヶ月に1回ユーザー向けの勉強会などがあります。対面イベントでは、各地のオープンソースカンファレンスや関西オープンフォーラムでの展示や講演、毎月第4木曜に大阪での小さな集まり「LibreOfficeの日」などがあります。気になるイベントがあれば、ぜひご参加ください! イベント一覧ページ 申込サイト(LibreOffice日本語チーム)
Month: August 2024
プライバシーを重視するオフィススイートユーザー向けのLibreOffice 24.8
新しいメジャーリリースでは、豊富な新機能に加え、相互運用性の改善も大幅に向上しています。 2024年8月22日 ベルリン ― 自由なオフィススイートのボランティアサポート版「LibreOffice 24.8」がリリースされ、Windows版(Intel、AMDおよびARMプロセッサ)、macOS版(AppleおよびIntelプロセッサ)、Linux版がダウンロード可能になりました。 https://ja.libreoffice.org/download これは、カレンダーに基づく新しいリリース番号体系(年.月)を採用した2番目のメジャーリリースであり、ARMプロセッサー・ベースのWindows PC向けの公式パッケージを提供する最初のリリースです。 LibreOfficeは、ユーザーのプライバシーを尊重する唯一のオフィススイートです。個人情報や機密情報を含む可能性のある文書を作成するのに適した唯一のソフトウェアです。ユーザーは作成したコンテンツを共有するかどうかや、誰と共有するかを決めることができます。そのため、LibreOfficeはプライバシーを重視するオフィススイートユーザーにとって最適な選択肢であり、また市場の主要製品に匹敵する機能セットを提供しています。また、伝統的なものから現代的なものまで、さまざまなユーザーの習慣に合った幅広いインターフェース・オプションを提供し、デスクトップ上の利用可能なスペースを最適化することで、さまざまなスクリーン・フォーム・ファクターを最大限に活用し、1~2クリックで最大限の機能を利用できるようにしています。 LibreOfficeの他のオフィススイートに対する最大の利点は、デスクトップ、クラウド、モバイルのすべての環境に対応する「単一の」ソフトウェアプラットフォームであるLibreOffice Technologyエンジンです。これにより、LibreOfficeはより優れたユーザー体験を提供し、2つの利用可能なISO標準であるOpen Document形式 (ODT、ODS、ODP) と、独自なMicrosoft OOXML (DOCX、XLSX、PPTX) に基づいて、同一かつ完全に相互運用可能なドキュメントを作成できます。 後者は、大量の人為的な複雑さが隠されており、真のオープンスタンダードを使用していると確信しているユーザーにとって問題を引き起こす可能性があります。 サポートが必要なエンドユーザーはLibreOffice 24.8入門ガイドがすぐに利用できるようになります。ガイドは次のリンクからダウンロードできます。 https://documentation.libreoffice.org/en/english-documentation/ 日本語版はまだ古いバージョンですが、次のリンクからダウンロードできます。 https://documentation.libreoffice.org/ja/documentation-in-japanese/ さらに、ユーザーメーリングリストや質問掲示板のAsk LibreOfficeに質問を投稿して、他のボランティアユーザーからサポートを受けることもできます。 https://ask.libreoffice.org/c/japanese/16 LibreOffice 24.8の新機能 プライバシー オプション [ツール] ▸ [オプション] ▸ [LibreOffice] ▸ [セキュリティ] ▸ [オプション] ▸ [保存時に個人情報を取り除く] が有効になっている場合、個人情報(作成者名やタイムスタンプ、編集時間、プリンタ名と設定、ドキュメントテンプレート、コメントや変更履歴の作成者と日付)はエクスポートされません。 Writer UI: 書式設定文字の処理、コメントパネルの幅、箇条書きの選択肢、ハイパーリンク用の新しいダイアログ、サイドバーの新しい検索デッキを新たに追加 ナビゲーター: クロスリファレンスのドラッグ&ドロップによる追加、脚注や文末脚注の削除、リンク切れの画像の表示が可能に ハイフネーション: 新しいコンテキストメニューと表示でハイフネーションから単語を除外、列・ページ・見開きに跨る新しいハイフネーション、複合語の構成要素間のハイフネーション
